てくです。
株式投資では株主還元のうち自社株買いが株価へどのような影響を与えるかを考えたいと思います。
株主還元
そもそも、株主還元とは企業が得た利益を株主に還元することを指します。還元の仕方として主に以下の2種類があります。
- 配当金
- 自社株買い
ここではそのうち自社株買いの効果についてみてみたいと思います。
前提
自社株買いの効果を見るために以下は前提を設定します。簡単に言うと、純利益は一定で、PERも一定という条件ですね。
初年度の発行株数 | 1,000,000,000株 自社株買いする場合、毎年減少する |
---|---|
初年度の純利益 | $1,000,000,000 |
当期純利益伸び率 | 0%で一定 |
PER | 15で一定 |
配当性向 | 50% |
[tab_box_check_orange]上記を前提にしたときのEPSは$1.00になり、株価は$15.0、配当利回りは3.33%になります。[/tab_box_check_orange]
変化させる条件
変化する条件は以下のとおりです(自社株買いの効果を確認するためなので当たり前ですが)。
- 自社株買いの比率
今回検証するのは自社株買いを全くしない会社と純利益のうち20%を自社株買いするパターンを比較します。
パターン | 自社株買いの比率 |
---|---|
パターン1 | 0%(自社株買いを全くしない) |
パターン2 | 20% |
EPS増加効果
以下のグラフは自社株買い0%の場合と20%の場合の発行株数の推移をグラフ化したものです。初年の発行株数を100%として計算しています。
自社株買いの比率が0%の場合は発行株式数は変わりません。一方、20%の場合は毎年自社株買いをする訳ですから、発行株式数が減少することになります。20%の自社株買いをした場合、50年後には初年度の約52%まで減少することになります。
純利益が一定で発行株数が減少する訳ですから、EPSは増加していきます。以下のグラフは自社株買い0%の場合と20%の場合のEPSの増加の推移をグラフ化したものです。初年のEPSを100%として計算しています。
当然株式数が半減している訳ですから、EPSは増加します。20%の自社株買いをした場合、EPSは50年後には1.93倍にまでに増加します。
株価上昇効果
EPSは増加するため、PERが一定であれば、株価は上昇します。増加の仕方はEPSの増加と同じ形になります。
増配効果
配当性向が50%一定で、純利益が変わらず、発行株数が減るため、配当も増加します。増加の仕方はEPS、株価と同じ形になります。
上記の配当金のグラフはあえて初年を100%のように指数化していませんが、EPSや株価と同様に率でいえば1.93倍に増加していることになります。
初年が1株$0.5だった配当金が自社株買い20%の場合は50年後には$0.97に増加(1.93倍)することになります。利益も増えず、配当性向も変わらないにも関わらず、自社株買いをするだけで50年後には配当金が1.93倍に増えるのです。
変化しないもの
配当利回り、企業が配当に支払う金額は変化がありません。
まとめ
自社株買いする企業は利益が増えないとしてもPERが一定(15)、配当性向も一定(50%)の状況下においても以下のように株主によい効果を与えます。
- EPS増加(50年後には1.93倍)
- 株価上昇(50年後には1.93倍)
- 増配(50年後には1.93倍)
今回はPERが15で一定とした場合をシミュレーションしました。その結果EPS、株価、配当は約2倍成長しています。しかし、これらは効果の度合いはPERに依存しており、PERが20で仮定した場合、上記の効果はかなり小さいものになります。ここは注意が必要なところかなと思います。
コメント
とても解りやすい説明で、米国株が急騰したも背景の一要因になるのではないでしょうか。
あちこちのセミナーで専門の講師さん達は、EPSがこれからも増え続けるからまだまだもっともっと上昇すると口を揃えていってます。
しかしそれが自社株買による財務マジック効果が大きいと、見せかけの気がします。
これからどうなることやら・・・・・。
ありがたい記事でした。
たちばなマルコさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
そうですね。米国株は自社株買いが非常に大きいので財務マジックといえばそうかもしれませんね。
EPSだけではなく、売り上げや純利益の推移をみることが大事になるのだと認識しています。
自社株買いは株主還元の1つなのでそれはそれでうれしいです(^^ゞ